食道癌は悪性度が高く治療困難な癌のひとつであるが、積極的な治療効果向上の努力の結果、外科手術、内視鏡治療、化学放射線治療がめざましく進歩してきた。食道癌の特徴のひとつとして高齢者に多く発生することがあげられる。治療の問題点として、リンパ節郭清や再建臓器の点で外科手術の侵襲がきわめて高いことがあげられる。しかし、食道癌は他の消化器癌に比較して抗癌剤や放射線の感受性が高く、積極的に化学放射線療法が選択されることが多い。1998年1月から2011年12月までに筆者らが化学放射線治療を実施した高齢者食道癌症例を集計し、その効果と長期予後について検討した。化学放射線治療を行った45症例(55〜81歳)のうち、65歳以上の高齢者は26症例(57.8%)みられた。高齢者食道癌の進行度別内訳は、stage I 6例、stage II 3例、stage III 8例、stage IV 9例で、外科切除可能と考えられるstage III以下の症例が17例含まれていた。放射線療法は54〜66Gyの線量で、化学療法は5-FU/CDDPが多く、23例で治療が完遂できた。全生存期間の中央値は30.1ヵ月であり、治療効果がCRに至った14例(56.0%)の生存期間は100.5ヵ月であった。高齢者の食道癌患者は化学放射線治療を実施されることが多く、治療効果は良好であった。PR、SD症例は食道癌の再発により死亡していたが、CR症例は長期予後が得られた。高齢者食道癌においても化学放射線療法を実施する際にはCRを目指して積極的に治療することが重要と考えられた。