主な有機カチオントランスポーターには、OCTファミリーとOCTNファミリーがあり、前者はおもに腎臓や肝臓に、後者は腎臓、小腸、骨格筋、脳、肺などに広く分布している。これらトランスポーターの役割は栄養素や薬剤、内因性物質の輸送にあるとされ、消化器疾患とのかかわりはあまり知られていなかった。しかし最近、MDR1やOCTN1/2に炎症性腸疾患高感受性の遺伝子多型が発見され、消化器疾患とトランスポーターとのかかわりが注目されるようになった。われわれは、腸管上皮細胞膜に存在するOCTN2がB.subtilis由来ペプチドcompetence and sporulation factor(CSF)"を細胞内に輸送すること、それによって細胞防御蛋白であるHspが誘導され、酸化ストレスに対する抵抗性が飛躍的に向上することを見出した。これは、レセプターを介した細菌認識機構とは異なる、新しい宿主-腸内細菌の相互作用機構と考えられる。本稿では、一連の研究で用いた有機カチオントランスポーターの解析法とその輸送物質の同定法について解説した。