胃潰瘍形成に対する副交感神経系の意義をラットを用いて検討した.1)迷走神経胃枝を連続電気刺激すると胃体部に限局して潰瘍が形成された.潰瘍の程度ulcer index (mm)は4時間刺激群では2.0±2.0 (mean±SD),8時間刺激群では13.5±8.9 mmであった.2)胃壁内神経細胞は前胃部では筋層に存在し,胃体部・前庭部では筋層と粘膜下層に存在した.3)前胃部を支配する節前細胞は迷走神経背側核(DMN)内の吻尾側に拡がるカラムの外側部に,胃体部・前庭部を支配する細胞は内側部にすなわち部位特異的に分布していた.以上より,DMN内側部の細胞群の持続的興奮は胃体部の壁細胞から直接的に,また前庭部のガストリン細胞を介して間接的に酸分泌を増加させ,胃潰瘍形成に重要な役割を果す.その場合,粘膜下神経細胞が酸分泌機能の発現に関与するものと推定された